何と今回で第60回を迎えました。
ということは飽きることなく、毎月5年間も“栄養学”についてウンチクを述べてきたことになります。
今までお付き合いして頂いた皆様に、本当に感謝、感謝です。
ほんの少しでも、ちょっとでも皆様の健康に貢献できたら良いなと、心の底から願っています。
しかし、この間でも“栄養学”は大きく変化して来たような気がします。
まずは自分が日本に帰国して20年以上になりましたが、帰国当時のアメリカは、オメガ3やオメガ6の話題で湧いていました。
自分も帰国当時は、「オメガ3ジャーイ!、亜麻仁油ダァ!」と騒ぎ立てましたが、当時は誰も聞いてくれない時代でした。
しかし、やっと大手のスーパーが、亜麻仁油を取り揃えてくれるようになりました。
必須脂肪酸の必要性が、少しずつですが、やっと浸透してきたような気がします。
当オフィスでも、以前は必須脂肪酸を豊富に含む“アマニ・ロースト”を提供して来ましたが、遺伝子組み換え検査の問題から、アマニ・ローストの輸入が取り止めになり、もうどうにでもなれ!と開き直っていた時に出会ったのが“チアシード”でした。
亜麻仁よりもオメガ3の含有量に優れ、食物繊維を多く含み、ミネラルも豊富で、しかも酸化し難いと知り、驚愕したことを思い出します。
“チアシード”は、アメリカに滞在中からも探し求めていた素材でした。
名前が分からずに、地団駄を踏みながら帰国したことを思い出します。
日本ではチアシードは、数年前まで“ダイエット食”として販売されてましたが、今ではオメガ3豊富な健康食として受け入れられ、多くの人に知られるようになりました。
嬉しい限りです。
また20年以上前までは、“肥満”の原因となるのは“脂肪”と信じられて来ました。
「砂糖が問題ではなく、一緒に含まれる脂肪が肥満体を招く」と言われて来ました。
また多くの栄養学者は、カロリー制限や、脂肪制限食を提唱していましたが、今では“必須脂肪酸”の必要性が受け入れられ、少なくても体に必要な脂肪もあると受け入れられるまでになりました。
また少しずつですが、トランス脂肪やショートニング等による体への悪影響に対しても、多くの人が理解するようになり、時代の嬉しい変化を感じています。
そこで前回に引き続き、今回もちょっと怖い話しに戻ります。
ナント!なぜか最近は脂肪ではなく、“砂糖”が悪者になりつつあるのです。
最初の頃にご紹介した“砂糖”は、“炭水化物”として、体の“エネルギー”だとして説明してきました。
確かに体のエネルギー源となれるのは、炭水化物、タンパク質、脂肪の3つです。
だから栄養三要素と呼ばれて来ました。
そして、その中でも炭水化物が最も簡単に、また素早くエネルギーに転換されるという点から、最小必要源の炭水化物が体に必要だと提唱して来ました。
それが今、炭水化物というもの自体の見直しが問われるようになってきているのです。
まず炭水化物は大きく、“糖質”と“食物繊維”に分類されます。
これは以前にご紹介した通りです。
私たち人間の体は、糖分を吸収・消化できますが、食物繊維は吸収出来ません。
それは人間の体は他の草食動物とは異なり、食物繊維を消化する“消化酵素”が存在しないからです。
しかし私たちの体に食物繊維が与えてくれる恩惠は数多くあり、必要では無くなったコレステロールの排泄や、満腹感への効率促進の補助、腸の掃除、腸に生存する善玉菌への栄養素(水溶性の食物繊維)、排便効率の援助など、多くの役割を果たしてくれています。
ですから栄養学者の中には、糖質と食物繊維を炭水化物と区別している人もいます。
中には食物繊維を必要栄養素の一つとして捉え、七大栄養素(炭水化物(糖質)、脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラル、水分、食物繊維)と提唱している人たちもいます。
それが今では、“糖質”を悪者扱いしている人たちが増えて来たのです。
それは今の日本で問題となっている“糖尿病”の増加です。
今では日本には“隠れ糖尿病”を入れると、1,200万人以上の糖尿病患者がいると想定されています。
実に日本人の10人に1人が、糖尿病を患っていることになります。
しかしこれは自分は、過大評価だと考えています。
空腹時の血糖値やヘモグロビンA1cの標準値を下げている傾向があります。
これはコレステロール値や、血圧も同じです。
誰が考えたのか知りませんが、今では“日本1億人総疾患”を目指しているような気配もします。
日本人誰もを何らかの形で病気にしたいと目論んでいるようにも思えます。
昨今は“糖質制限”を提唱する人が増えています。
中には前回ご紹介した「ケトン体」が人類を救うと訴える人も出てきました。
肝臓で“脂質”から“ケトン体”を作り出し、クエン酸サイクルからエネルギーを作り出せば、糖質はいらないという主張です。
しかも脂肪酸の状態では血液脳関門は通り抜けれませんが、“ケトン体”になれば血液脳関門は通り抜けられ、脳の栄養素にもなると主張しています。
確かにアジア人は、他の人たちよりもインスリンの分泌量が少ないことは判明しています。
また縄文時代の日本人が、魚や獣を食してきたことも証明されています。
しかし、一概に糖質を一切避け、肉食だけにするのも疑問が残ります。
質の良い必須脂肪酸の摂取は受け入れられますが、どんな脂肪でも良いとまでは考え難いのです。
また次回に続きます。
栄養と日常生活#060:少し怖い話し(2)
奄美世のごはん#045:基本の4
わかってるけど、止められないんですよね、甘いもの。
私たちは、美味しいものを食べると、とても幸せな気分になります。
なんだか、とても優しくなります。
どうしてでしょう?
私たちが、美味しいものを食べることで得る満足感は、2つの作用により作られるそうです。
1つめは味覚です。美味しいものを食べると、舌にある細胞が味を感じます。その味覚の情報が神経を通って、「美味しい食べ物が身体に入ってきた」と脳に伝えます。
もう1つは、食べた後に身体の中で、血糖や食べ物に含まれていた様々な栄養素が増えたことを、脳が感知します。
この2つの作用が統合されて、脳の中の報酬系という部位に伝達されると、神経伝達物質のドーパミンやエンドルフィンが分泌され、心地いい感情や、多幸感をもたらすと考えられています。
そんなわけで、私たちは、甘い物の誘惑にまどわされるのです。
2つの作用はまた、満腹中枢を活性化し、摂食中枢を抑制します。
お腹が満足して、食べるのを止めようとします。
fMRIの実験で、カロリーのある砂糖液と、カロリーのない合成甘味料液を摂取したときの、脳の反応を観察したら、こんな結果が出たそうです。
砂糖やぶどう糖を摂取した時には、舌で甘味を感じ、さらに吸収した後に血糖値が上昇するので、脳内で摂食の信号が抑制され、食べる欲求が抑えられます。
しかし、アスパルテームやマルトデキストリンなどの、合成甘味料の摂取では、舌の細胞は味を感じますが、血糖値を上昇させないので、摂食の信号の抑制が観察されません。
血糖が増えないので2つめの作用が起こらず、報酬系の活性もなされませんから、ドーパミンやエンドルフィンは分泌されず、食後の満足感が低下します。
これはさらに食べものを欲するきっかけともなります。
合成甘味料はまた、砂糖(蔗糖)より強い甘味を持つため、自然な甘味では満足できなくなります。
甘味への依存が高まったり、血糖値を上げないから、低エネルギーだからと、過剰な摂取につながる危険性もあります。
しかし、血糖値のコントロールが必要な人には、便利な甘味料です。
ていねいに、過剰摂取にならないよう、上手に利用しましょう。
何を食べますか
誰と食べますか
どこで食べますか
食べるものに感謝して
食べる楽しみをじっくりと味わう
奄美世のごはん#044:基本の3
春分の日は、太陽が出ている時間と沈んでいる時間がそろいます。
その日、太陽は真東から昇って、真西に沈みます。
一気に階段を駆け上がるように、血糖値を急激に上げてばかりいると、私たちの身体は疲れきってしまいます。
血糖の急激な増加を、なるべく穏やかにする工夫をしましょう。
そのためにはまず、糖質の種類の選択です。
つながる数が少なければ少ないほど、消化吸収の速度は速く、血糖の増加も急激になります。
このような糖質を減らしてあげると、身体は階段を駆け上がる必要が減って、他に働く余裕ができます。
加工した食べ物や飲み物を購入する時には、原材料の表示を確認して、〇〇糖という表示がある物を避けるといいでしょう。
前回お伝えした、液体の異性化糖は身体にも環境にも負担をかけます。
調理をするときには、単糖類や2糖類など、精製された糖分を避けたり、使う量を減らしましょう。
オリゴ糖は消化吸収されにくいため、血糖の上昇を抑えるといわれます。
ところが、オリゴ糖使用をうたう商品の中には、オリゴ糖より蔗糖の割合が多かったり、スクラロースなどの合成甘味料を使用したものもあります。
原材料の表示を確認してみましょう。
お米やお芋のでんぷんは多糖類です。
糖がたくさんつながっている多糖類は、つながる糖が少ないものより消化に時間がかかるので、血糖を上げる速度は比較的遅くなります。
少ない糖より多糖類です。
加工の程度や精製度が低いと、各種の栄養素とともに食物繊維も一緒に摂ることができます。
糖質の種類の選択ができないときは、食べるタイミングを利用します。
糖質の多い食品より先に、食物繊維を多く含む食品を食べましょう。
食物繊維によって消化吸収の速度が落ちるので、糖質の血中への吸収が穏やかになります。
食べ初めに野菜や海草など繊維質を多く含む料理を、よく噛んでゆっくり食べましょう。
ゆっくり食べることで、糖が体内に入ってくる速度を抑えることができます。
良く噛むことが満腹中枢を刺激して、食べ過ぎを防ぐことにもつながります。
また、陽が傾く前、日中のほうが血糖値が上がりにくいとする研究もあります。
でもやはり、食べた分だけ血液中の糖は増えます。
精製度の低い多糖類を選んで、ゆっくり食べて、消化の速度を穏やかにしても、体内で使う先のない糖質は、一部を除いて脂肪に変換されて貯えられることになります。
この脂肪は、皮下にも臓器にも血管内にも蓄積します。
とはいえ糖質は食べる楽しみをもたらします。
無理な制限をするより、自分自身の良い加減を探してみてはいかがでしょうか。
血糖の恒常性維持において、食べることに加えて欲しいのは運動です。
運動をすると筋肉がエネルギー源として血中のぶどう糖を使います。
筋肉はインスリンの助けがないときでも、AMPキナーゼという酵素によって血中のぶどう糖を利用することができるのです。
ひとつ手前のバス停で降りる。
遠い方の改札を利用する。
出かける時に少しだけ遠回りをする。
駐車場の端っこを利用する。
片道だけ自転車を押して歩く。
階段の利用を増やす。
けっして激しい運動をする必要はありません。続けることが大切です。
そして・・・
一日を振り返る
一週間を振り返る
足りなかったものはありますか
食べ過ぎたものはなんでしょう
奄美世のごはん#043:基本の2
立春に生まれた春が、あちらこちらに顔をのぞかせています。
花が咲き、新芽が出ます。
植物が陽の光を利用して創り出した炭水化物から、食物繊維を区別したものが糖質です。
糖質は、つながっている糖の数によって分類します。
糖ひとつが単糖類、ふたつが2糖類、オリゴ糖は学問的な定義はないようですが、一般に2~10個程度のものを指すようです。
そして、多糖類は糖が数十個から数百万個つながっています。
台所にある砂糖の主成分は“蔗糖”です。
ぶどう糖と果糖がひとつずつつながった2糖類の仲間で、化学名が“蔗糖”です。
砂糖のうち、蔗糖の含有量が95%を超えるものが、上白糖や三温糖。
高純度の糖液を結晶化させたグラニュー糖や氷砂糖は、99.9%が蔗糖です。
商品にもよりますが、てんさい糖は85%で黒砂糖は75~86%です。
蔗糖は、単糖類がふたつつながっただけですから、消化吸収が速く、血糖が急激に増えます。
砂糖の中でもっともミネラルの含有量が多い黒砂糖もやはり、その主成分の蔗糖が急激に血糖値を上げてしまいます。
血糖値とは、血液中のぶどう糖の量です。
果糖は、消化管もしくは肝臓でぶどう糖に変えられ血中に入りますから、やはり血糖の上昇につながります。
私たちが口に入れ消化吸収し身体に入ってくる糖質は、その量が同じであっても、ゆっくり入ってくるのと急に入ってくるのとでは、身体の対応の仕方がずいぶんと違います。
例えば、階段を2階まで昇るとします。
一段ずつゆっくり昇るのと、一気に駆けあがるのとでは、ぜんぜん違うでしょう。
血中の糖の量の増減も、その速さによって、身体の反応が違うのです。
急激な血糖の上昇は身体にひどく負担がかかるので、これを遅らせる工夫が必要となります。
摂取後に否応なく、駆け上がらなければならなくなるものが、“ぶどう糖果糖液糖”です。
トウモロコシのでんぷんを化学的に加工したコーンシロップから作られる、“異性化糖”のひとつです。
多くのペットボトル飲料、スポーツドリンク、スタミナドリンクなどに使用されている、液体状の単糖類です。
液体ですから咀嚼の必要がありませんし、単糖なので消化の時間もかかりません。
酸味料や香料などで、飲みやすくなっているので、ごくごくと一度にたくさん飲めてしまいます。
砂糖よりも安価で、加工に手間がかからず、消費期限も長いので、あらゆるソフトドリンクに使われています。
この“ぶどう糖果糖液糖”の素、輸入コーンシロップの原料となるトウモロコシは、遺伝子組み換えトウモロコシがほとんどであり、栽培時に大量の農薬が使用されます。
つまり、この液体状の単糖類は、私たちの身体だけではなく、土地の状態も大きく変えてしまうものなのです。
選んでほしい食べものは、
身体が喜ぶ食べもの
心が喜ぶ食べもの
地球が喜ぶ食べもの
