栄養と日常生活#011 (仲井DC)

前回(こちら)は、炭水化物を誤った形(精製された炭水化物)で摂取すると、恐ろしい結果を招きますよとご紹介しました。
また「膵臓から分泌されるインスリンと、脳との壮絶な戦い」についてご紹介しましたが、今回は多くの人が悩んでいるダイエットに関わる話しです。

精製された炭水化物は、血糖値を急速に上げてしまうと説明しました。
それだけでも大問題ですが、精製された炭水化物には、もう一つ重大な問題が隠されています。

今まで何度も炭水化物はガソリンだと強調してきました。それは揺るぎない事実です。
しかしガソリンをエネルギーにするには、ガソリンに点火する必要があります。

そうなんです。
炭水化物が体内に吸収されて、ブドウ糖をエネルギーにするためには、細胞内にあるミトコンドリアという器官で、前準備をする必要があります。
この過程を専門的にクエン酸サイクルと呼びます。

クエン酸サイクル(図1) | DoctorsSuggestion.com(健生)図1(左図)にあるように数多くの段階を経て、エネルギーになる準備が行われています。

それぞれの段階の名前を覚える必要はありませんが、多くの生化学的な過程を経て産生されたエネルギーは 、ATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれる蓄電器に蓄えられます。
そして最終的にエネルギーを必要とする細胞にATP が送られます。
図1のサイクル一周で38個のATPが作られます。
1つのATPには8カロリーのエネルギーが蓄えられています。
ATPは体内のエネルギーを必要とする細胞に運び込まれ、そこで初めてエネルギーに転化されます。
メデタシ、メデタシのハッピー・エンドとなり、私たちの細胞はエネルギー満たんとなり、元気一杯に活動できるように成ります。
エネルギー満喫で疲れることなく動き回れば、当然ながらエネルギーが消費され、代謝がさかんに行われますから、皆さんはダイエットに成功します。
更に元気になって有酸素系の運動(歩行やエアロビック)をすれば、脂肪も燃焼されますから、一石二鳥でダイエットできます。

つまりミトコンドリアで大量のATPが生産し、必要とする細胞にどんどんエネルギーを送り込めば、それだけ代謝が進んで、ダイエットすることになります。
すると、ブドウ糖の原料である糖分を大量に摂取すればする程、元気になれて、しかも減量できることになる!

本当?

ちょっと待って下さい。
皆さんは大量の糖分摂取が体重を増加させる原因と考えていませんか?
甘いものを食べると太るというのが、私達の持つ一”般常識”ですよね。

そこで種明かしです。
太るのには大きく2つの原因があります。

第1の原因は、炭水化物が正しい形で摂取できないと、クエン酸サイクルが正しく作動できずにATPが生産できず、ブドウ糖がサイクルの途中で脂肪に転換され、脂肪細胞に蓄積されてしまいます。
当然エネルギーは生産されませんから、体は活発に動くこともできませんし、力も沸きません。
そこであなたは疲れ果て、体を使おうとせずに休みます(運動不足)。
結果として脂肪が大量に蓄積されて太るわけです。

第2の原因は、多くの甘いものには脂肪が大量に含まれます。
しかもケーキなどの菓子類には、エネルギーに転換できないトランス型脂肪酸が使われています。
脂肪は脂肪細胞に蓄積され、結果として太ります。

ここで問題になるのは、第1の原因となった、クエン酸サイクルで、なぜサイクルが正しく作動しなかったのかです。

クエン酸サイクル(図2) | DoctorsSuggestion.com(健生)そこで図2(右図)をご参照下さい。
クエン酸サイクルの周りに沢山の B~がありますね。
パントテン酸やビオチンもあります。
実はこれは全てビタミンB群なのです(アミノ酸もありますが、これはタンパク質の時に詳しく説明します)。

つまりクエン酸サイクルが正しく作動するには、充分なビタミンB群が必要になるのです。

しかし問題なのは、精製された炭水化物からは、ビタミンB群が取り除かれてしまっていることです。
ですから、当然ながらクエン酸サイクルは正しく作動しません。

精製していないお米にはビタミンB群が豊富に含まれていますが、その多くは胚芽の部分です。そして玄米の糖層には多くのミネラルや食物繊維が含まれています。

こう考えて下さい。
皆さんは白米を蒔いて稲が育つと思いますか?
胚芽米を蒔いて、稲が育つと思いますか?
お米が育つには、生育するために必要なものが備わっていなければ、発芽することはできません。
つまり白米の状態は、不完全な食べ物と考えることが出来ます。
白米の状態では、ミトコンドリアの中ではATPを生産できませんから、体はブドウ糖を脂肪に変えて蓄積してしまいます。

何故、体はブドウ糖をわざわざ脂肪に転換するのでしょう?
理由は簡単です。
前回と同じ結論に達します。
我々人間は、ほんの100年前までは“飢餓”の時代に生きていました。
その日暮らしをしていたのですから、いつ再び食べられるか分からないので、体内に脂肪というエネルギー源として蓄える必要があったのです。

100年で今の食生活に対応できるまで進化するのは無理です。
我々が今のホモサピエンスにまで進化するのに、450万年以上もかかっています。
またホモサピエンスの誕生から現代人間まで進化するのにも20万年以上費やしています

たった100年で、人間の体を、今の食生活に充分に適応させることは到底無理なことでしょう。

栄養と日常生活#010 (仲井DC)

前回は炭水化物は精製されていない状態で摂りましょうとご紹介しました。
今回は「何故、精製された炭水化物は体に良くないの?」を考えてみます。

まず最初に自分が子どもの頃の生活を振り返ってみます。
もう40年以上も前の話しです。
考えてみると、オイオイ随分と年とったなあと実感してしまいました(少し寂しい・・)。

 

 

自分は生まれてから小学6年生まで静岡市で過ごしました。
昔の静岡といえば、「ミカン」です。
冬から春にかけては、学校から帰ると、いきなりミカンを毎日4~5個は食べていました。
春から夏は漬け物のダイコンの尻尾をもらったり、削り節(これも静岡名産でした)の小さくなった残りを食べたり、物置き小屋に置かれたぬかづけの樽に手を延ばして、ひからびたキュウリやナス、またはダイコンなどを隠れて食べていたことを思い出します。

余り自慢にならない昔話ですが、何を言わんといいますと、自分達が子どもの頃は、おやつに糖分を摂る習慣がなかったことです。
ケーキは誕生日のお祝いの時と、クリスマスの時だけだったと思います。
飲み物も、夏は麦茶か水、冬は緑茶か番茶でした(そういえばコブ茶もあった)。
夏にカルピスがあったこともありましたが、何かのご褒美で飲ませてもらえるだけで、常飲させてはもらえませんでした。
チョコレートやキャラメルなどのお菓子は普段は買い与えられず、遠足の前日に数百円もらって、駄菓子屋に買いに行ったものです。
遠足よりも一緒に持って行くお菓子の方が楽しみだったことを覚えています。
数十円持って駄菓子屋に行くのが自分達子供の頃の一番の楽しみでした。

可哀想だと思わないで下さい。
それがごく当たり前で、一般的だったのです。
おやつにケーキやチョコレートを食べることができるとは、当時は想像もしませんでした。
たまにお客さんが来ると、お茶菓子が用意され、一緒に食べることができたことも楽しみの一つでした。
それだけ、おやつイコール糖分という環境ではありませんでした。



白米(左上) 小麦粉(右上) 砂糖(下)本題に戻りましょう。
精製された炭水化物が自分達の体に与える影響を考えてみましょう。
まず分解された炭水化物は殆どブドウ糖に近い状態にまで精製されていますから、小腸から簡単に、しかも短時間で吸収されて血中に送られます。
すると急速に流れ込んだブドウ糖が血糖値を急速に上昇させます。

つまり、この時点で高血糖になります。
するとお腹の真ん中辺りに位置する膵臓が、血液内の血糖値の上昇を察知します。
ここで気をつけて欲しいのは、血糖値の高低を察知するのは脳ではないことです。
高血糖に気付いた膵臓はβ細胞からインスリンを放出して、血液内のブドウ糖を体の細胞に運んで、血液内の血糖値を下げようと一生懸命に働きます。

急速な血糖値の上昇に対する、大量のインスリンの放出は、今度は反対に低血糖を引き起こします。
急激に血糖値が上昇したのですから、膵臓も驚いて、高血糖に対応して大量のインスリンを放出します。
すると一時的ですが、血液内の血糖値が急速に下がり、低血糖になってしまいます。

前回ブドウ糖はエネルギー源であるガソリンだと説明しましたが、そのエネルギー源を一番必要とする臓器は“脳”です。
“脳”のエネルギー源はブドウ糖だけです。
体内に吸収された炭水化物の20%以上が、脳のエネルギー源になると言われています。

低血糖になって困るのは、当然ながら“脳”です。そこで怒り狂った“脳”は指令を出します。「何やってんや、早くブドウ糖を摂らんかい!」と・・・。

指令を受けた体は素直に炭水化物を求めます。
目の前には白砂糖たっぷりのショートケーキ。
“脳”の指令を受けたあなたは、ガブリとケーキを貪ります。

デジャ・ブって聞いたことありますか。
以前に経験した同じ体験や、以前に見た光景が偶然に再現することを指します。
まさしく体の中でデジャ・ブが繰り返し起こります。

 

精製された炭水化物が大量に体内に入る

急速に小腸から吸収され、血糖値が急上昇する

脳に関係なく、膵臓から大量のインスリンが放出される

大量のインスリン放出は低血糖を引き起こす

脳が怒り狂って炭水化物を摂取する指令を出す

「以下、デジャ・ブが永遠と続く」

 

果たして最終的に勝利を収めるのは、“脳”でしょうか、それとも“膵臓”でしょうか。

“脳”が勝利を収める場合は、あなたの膵臓機能は著しく低下または衰弱してインスリンを放出できなくなります。
血糖値も常に上昇した状態になりますから、“脳”は常にエネルギー源が豊富な安泰な時を過ごせます。
しかし嬉しくないおまけがつきます。
大量のブドウ糖が血液中に常在しますと、正常であれば腎臓で再吸収されるはずのブドウ糖が正常範囲を越えて濾過しきれなくなり、溢れたブドウ糖を尿に排出してしまいます。
この状態や空腹時の血糖値が高かったり、ヘモグロビンA1cが高い状態を、医療関係者は“糖尿病”と呼びます。

では激しい戦いにあなたの逞しい“膵臓”が勝利したらどうなるでしょう。何度ともなく繰り返される高血糖と低血糖による“脳”への影響は、あなたの気分をアップさせたり、気分をダウンさせます。
つまりアップダウンの繰り返しです。
極限まで進行すると、医療関係者はこれを“躁鬱病”と呼びます。

近頃よく聞きますね。
子供がじっとしていられない。
落ち着きがなく、直ぐに興奮したり、泣き出す。
切れやすく、喜怒哀楽が激しくなる・・・。
これは今まで説明した炭水化物の過剰摂取が主な原因の一つだと確信しています。

あなたのお子さんは大丈夫ですか?

これだけではありません。まだまだ次回も続きます・・・